「なぁカオスってさ」
「なんだよ」
「俺の事、どう思う?」
「恋愛対象として見ている、とか言ったらどうするんだお前?」
「………………」
「冗談だ。男相手に欲情するわけねぇだろ」
「……なんかカオスの冗談って、偶に冗談に聞こえないんだけど……」
「――――まだまだ、お前は俺にとってのガキだな」
「保護者、ってこと?」
「そういうお前は、俺の事をどう思ってるんだよ」
「うーん…………保護者」
「ほーら、やっぱり。お前が俺のマスターになるなんて、何十年も先の話だ」
「うううぅぅぅ……」
「でもな」

ミュウツーが言葉を切る。
傍に座っていた少年が首をかしげる。
そして。

「子供が成長していくっていうのは、面倒見てる身としては寂しいんだよ。だから、あんまし成長すんな」

ぽんぽんと頭を叩かれて、少年はちらりとミュウツーを見る。そして、

「なんか俺、一生、カオスの主人になれそうな気がしないや。俺にとっては、やっぱ、親みたいな存在だし」
「よし。それじゃあ保護者として、まずお前には女の口説き方から教えるか」
「前言撤回。早く一人前のトレーナーになって、ちゃんとカオスを制御できるように頑張るよ」

深いため息をつく少年の頭を軽く叩きつつ、ミュウツーはにやにやとした笑みを浮かべた。




彼にとっての子供

×

彼にとっての保護者





(迷子の子供を連れて、世界を知らない獣は、世界を少しずつ知っていった。)

110116:ってことで……えー、レポート提出3日前でありテスト3日前であり気力が著しく死んでいるいーづかさんが何となく書いてみた話でした。
単純にBWの新ポケモン、オーベムさんを出したいがためだけに考え付いたとも言います。っていうか、いーづかさん、情報の指導案と感想どーすんのよおおおおおおお!?

閑話休題。

今回は、普段スポットを当てないミュウツーのカオスを中心に話を書いてみました。後はシュウについても過去をちょろっと。
いつも適当なカオスなのですが、根っこは主人馬鹿と言うか親ばかです。シュウやレジェンに事が及ぶとなると、何だかんだ言っても相手を倒そうとするという。
シュウは基本的に一般人なのですが、育ち方が若干変わっておりまして、この話の通り、ポケモンに育てられたような状態です。もちろん、父親のレジェンも時々面倒をみているのですが、忙しさも含めて、ほぼカオスに丸投げ。……ある意味、よくここまでカオスの性格に染まらなかったなーというのは、実際に思ってたりするとかなんとか。

そんでもってオーベム。BW進めていて捕獲した時には我が目を疑いましたね、図鑑説明。
なにせ「サイコパワーで相手の脳みそを操り、記憶する映像を違うものに書き換えてしまう」ですよ。流石の私も驚いて開いた口ふさがらなかったよ!ここまで悪人向きのポケモンはある意味で嬉しいy(蹴)
プラズマ団とかが手なずけたら、絶対に洗脳に使いそうだなーと思いつつ、今回の話の主役として出てきてもらいました。
ミュウツーのカオスとの会話だけだったので、実際に彼らの会話を聞いた人間がいたしても、多分、カオスの言っている言葉しか伝わらないだろうなぁ……とりあえず、書くときはバル.タ.ン星人や特撮系でライト持ってる怪獣をイメージしながら書きました。
残念なことは何かと言うと、パワーシェアとガードシェアを上手くかけなかったことかなぁ。……wii.verでの表現の仕方を期待しております。後アニメ。
で、以下に余談。個人的な感想を言えば、協会長を実は今回初めてまともに書いたと思います。














?.
















「あのオーベムってポケモン、やっぱり、例のイッシュ地方にしかいないポケモンだったよ。分析が出たって、クレフ君から連絡。多分、イッシュから引っ越してきたという女性を操って、この地方まで来たんだろうなぁ」
「そうか」

書類を提出しに来たレジェンの言葉に、協会長は頷いた。
茶色の髪に紅色の瞳は、見事なまでに彼の息子へと受け継がれた。現在、その息子はまだまだ若いが、後数十年もすれば、この男のように威厳ある人物になるだろう。ただでさえ、この協会長は感情が非常に乏しく、その息子もやはり感情表現をあまりしない。そのためか、親子ともども、実年齢よりも年をとっているように見える。この男に関しては、今はその老けた状態が、相手に威圧感を与えるというプラスの意味で働いているが。資料を受け取ると、彼は目を通しながら呟いた。

「最近、あの地方では、この地方以上にポケモンを捨てる事件が発生しているそうだ。正確には、事件と言うよりは、現象というべきか……」
「あぁ。例の、プラズマ団、だっけ? なんかポケモンを解放するように演説し回っている、っていう。向こうはいいねぇ、過激じゃなくてー」
「それでも、地方全土を揺るがしかねない組織として、国際警察や向こうの協会にはマークされているそうだ」

冷静な表情のまま、協会長の男は受け取った資料を読み進めている。それを盗み見るように目をやってから、レジェンは肩をすくめた。

「ポケモンは人の手から解放されるべき、ポケモンを自由にするために野生に逃がしてやる、ねぇ……逃がしている人達は、人間がポケモンをボールに入れてるのは可哀想って、心のどこかで思うから、演説とかに共感しちゃうのかな」
「そうした人間達は、そのほんの一時的な感情で――――後の事を考えていないのだろうな」
「うーん?」

事の成り行きが書かれた始末書に目を通し終えた協会長は、深い息を吐き出す。意味が分からずに首をかしげるレジェンに、彼は人では見られないような酷く赤い瞳を細める。

「人間に育成されたポケモンと言うのは、良くも悪くも、野生のポケモンより強い。そして当然ながら、ポケモンは人間よりも強い存在だ。人間は自分達がポケモンを持っていることで、初めて野生の彼らと戦う事が出来る」
「そうだねぇ」
「では、これが、もしも人の手を離れて――――もしも、人間に牙をむくようになったらどうする? それが、沢山の人間が、一度に手放したポケモン達が、自分たち以上の数で襲ってきたら……どうなる?」
「あぁ……」

恐らく、人間は数日も見たない内に蹂躙され、全滅するだろう。ポケモンと言う不可思議な存在の前に、人間の科学力と言うのは非力な物だ。人間にはコントロールしえない自然の力を操る彼らに対して、人間は一体、どういう策がとれるというのだろうか。
その様が分かったのか、レジェンは肩をすくめた。ついでに、そんなことを平然と言ってのけた協会長を前にして、彼は小さくほほ笑む。

「それで、クールはそんなことをする予定はあるのかい?」
「私は人間が好きだ。だからこそ、人とポケモンが歩み寄れるものだと知っているし、信じている。――人間のお前もそうだろう、レジェン」

逆に問われて、レジェンは困った表情のまま「当然だろう」と頷く。
――――人の形をした炎の帝王は、ポケモンを恨んでいた人間の言葉に、祝福を願うかのような笑みを返した。




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