【"名"犬というもの】 エステル 「あ、ラピード。ちょっとお願いできませんか?」 ラピード 「ウォンッ!」 エステル 「えっと、こうして……こんな風で……出来ました!」 ラピード 「クゥーン?」(何かシャーロック○ームズが被ってそうな探偵の帽子を被りつつ) エステル 「さっき見た本の中に、ラピードの様な犬が帽子を被ってる姿があったので、折角ですからと。……あの、駄目でしたか?」 ラピード 「……ウォ、ウォン!」(ちょっと戸惑うも、すぐに首をふるふると左右に振って軽く吠える) エステル 「良かったです! 折角ですから、ユーリ達にも見せてあげましょうね」 ラピード 「ウォンウォン!」
【続:"名"犬というもの】 ユーリ 「……あー、くそっ……どこにやったんだ――」 エステル 「どうしたんですか、ユーリ?」 ユーリ 「……――ここに置いてあったはずの装備品が無くなったんだ。エステル、知ってるか?」 エステル 「いえ、私も……あ、そうです。今のラピードならきっと探せます!」 ユーリ 「あ、なんで――――どうした、ラピード。その帽子は……?」(半眼でラピードを見下ろす) ラピード 「……ウォン!」(少しだけ困った表情をするも、誇らしげにキセルを揺らしてみせる) エステル 「先程みた本が、こういう帽子を被った犬が様々な事件を解決するお話だったんです。きっと、今のラピードなら分かるはずです!」 ユーリ 「何かものすごく無理を言ってる気がしないでもないが――と、いうことらしいが……どうだ、ラピード。とりあえず、何か分かるか?」 ラピード 「クゥーン……!……ウォン、ウォンウォン!」 (少しだけ周囲を嗅ぎまわった後に、ぱたぱたと駆け出し、部屋の外へ出ていく) レイヴン 「ん? ――あ、こらっ、それは日々の仕返しとしてこっそりと隠し持ってた備品、いたっ、あいたああああああ!!」 (以下、どたばたとした混戦の後に、とたとたと廊下を走る足音が聞こえ、やがて扉がゆっくりと開く。) ラピード 「ウォン!」(口元に指輪を加えた状態で戻ってくる。) ユーリ 「お、それだそれ」 エステル 「それ、なんです?」 ユーリ 「"エメラルドリング"とかいうもので、術を発動する時に補助的な役割をするらしい。買いものでちょっと見つけたんだ」 エステル 「でも、何でレイヴンさんが持っていたんでしょうか?」 ユーリ 「さてな。――ほら」(エステルの手にすっと指輪を置く) エステル 「?」 ユーリ 「俺は別に術を使用するわけじゃない。その代わり、必要な時の回復は頼んだぜ」 エステル 「あ……はい!」 ラピード 「クゥーン……」 ユーリ 「当然、ラピードもな」 ラピード 「ウォンッ!」
【続々:"名"犬というもの】 リタ 「犬、どうしたのよ?」 ラピード 「クゥーン?」 リタ 「頭の帽子よ、帽子。あいつ……なわけないから、エステルから?」 ラピード 「ウォン」 リタ 「ふーん……何か、物語に出てきそうな感じよね。何か特別な能力でも増えた?」 ラピード 「ウゥ……ウォン?」 リタ 「まぁそんなんで強くなるなら苦労しないわよねー」 ラピード 「ウォンッ……ウォンウォン!」(むっとした表情をすると、ちょっと強そうな感じのアピールでも取るように誇らしげに胸を張る) リタ 「って、誇らしげにされても……そうね……例えば、何か倒したら分かるかも」 ラピード 「ウォン!」(軽く声を上げると共に、ぱたぱたと部屋を出て階段を駆け上る音。) レイヴン 「ん? なんだ。今日は何も悪いことしてあいたっ、うわっ、いたたたたたっ、ちょ、待――!!」 (以下、どたばたとした混戦の後に、とたとたと廊下を走る足音が聞こえ、やがて倒れてるレイヴンを引っ張ってくる) ラピード 「ウォン!」(どさりとレイヴンをその場に落として) リタ 「あらホント。ちょっとは強くなったわねー」 レイヴン 「……いやあのね、おじさんは別にサンドバックじゃないんだけどなぁー……」(遠い目でぼやく)