【追記の後日談】

(これは、とある出来事から数時間後の、とある犬が主人の仲間内の会話を偶然耳にした物。)

「結局あれ、何だったのかしらねー」
「何々、気になるの、リタ?」
「あいつの嫌味握っておいたら何かと楽そうじゃないの。でも、あっちはあっちで『何でもない』の一点張り、エステルは『心配されただけ』の天然返しだし」
「んー、おじさんとしては、あれは"青春時代"じゃないかと言ってみる」
「おっさんの言うこと、一度としてあたった試しないじゃないの……」
「単純に注意だったんじゃないかな、やっぱり。ユーリは何だかんだ言って面倒見いいしね」
「おせっかい、だと、あれだけサバサバしてたら当てはまらないわよねぇ」
「いやぁ、若いのはいいねー。悩むことがある内には、色々悩んでおくべきだろうし」
「なんかあんたは悩みなさそうでいいわよね」
「いやいや、きちんとあるぞ。とりあえず、今日の夕食にありつけるかどうか」
「……あー、そういえば今日の料理当番、あの二人だっけ」
「ユーリとエステルだね。何か問題あるの?」
「…………やっぱ当たるかもね、あんたの予想」
「え、何が?」
「休憩に入るまで手を握りっぱなしだったのを、彼が覚えているかどうか。そこが問題だねぇ」
「そーねー。何かこれでさらに片方だけ気不味い雰囲気ぽかったら、夕飯は悲惨よねぇ」
「え、え? 何が?」

(そんな会話を耳にしたのちに、その犬は食事の準備をしている主人の所へ向かってみる。あたふたと準備の段階で大慌てする少女の隣で、手を伸ばすか伸ばさないかぎりぎりのところで手を伸ばしたまま悩んでいる主人の姿を目にすることとなった。)