【造花】「あの、アルーグさん。すっごく前から気になっていたんですけど……レディさんの頭の花って、一体どうなっているんですか？ 枯れないし、崩れないし」「造花って知らないのか、お前」 「造花？」 「簡単に言えば、人工的に作った花の模型だ。別に本物じゃねぇから、枯れないし簡単に崩れないぞ」 「ほわぁ……人間の技術力って凄いですねぇ。それで、それはアルーグさんがあげたんですか？」 「そんな訳ないだろ。そういや、いつの間にかつけてたな、あれ」 「何時の間にかって……。つまり、最初に出会った時はつけていなかったんですよね？ それ、いつごろ〜とか思い出せないですか？」 「お前に関係あるのかよ、そんなこと」 「やっだなー、ただの好奇心ですよ。アルーグさん、天魔や精霊っていうのは、興味を持ったことには何でも知ってみようと思うんですよ。ってことで！」 「そこで事務所のソファに寝転びながら新聞読んでる国王っぽいのに聞け」 「ちょっと！ ぽいって失礼じゃないかしら、アルーグちゃん」 「あー……あの、国王さ……じゃなくて。リゼ様は、レディさんの花、誰からか知ってますか？」 「私よ」 「へー……って、えええええ！？ リゼ様があげたんですか！？」 「その驚き、首が吹っ飛んでいいためかしらぁ？」 「いやいやそうじゃなくて！ あの、その、うーんと……何といいますか、国王からその親族へ物をあげるとしたら、なんというか、煌びやかな物、という印象がありまして」 「あのちびっ子天魔王がそうだからか？」 「いえいえ。他国の人間の国王を見て、ですよ。ラプサン様は…………比較的不健全というかそーいうのはこれっぽっちもこっちの心情をくみ取りませんから、後始末も含めて」 「アイツ、意外と苦労してるんだな」 「あの割と気性の激しい天魔王の元片腕だぞ。当然、苦労は絶えないに決まってるだろ」 「ここでも十分苦労してますし、今も一応片腕ですからね、お二人とも！！ ――それで。何で造花なんですか？」 「前に一度、城下町を一緒に散歩出来たときにね、じーっと見ていた花がそれだったのよ。結局、何であの花を見ていたのか、理由なんて全く聞けなかったんだけど……あの子が興味を持ったのであれば、それはきっと、数少ない欲しいものかな、って思ってね」 「ちなみに、花の種類は？」 「確か、"アネモネ"だったかしら」 「アネモネ……どっかで聞いたことあるな」 「お、アルーグさん。何か心当たりでも？」 「あぁ。確か昔…………妹が好きで買って行ったら、部屋の中があふれかえったことがあった気が……」 「へぇー。ロマンチックですね」 「どこがだよ。部屋の中一杯に花なんてあるとな、無駄にくしゃみが増えるし、妙にじめっとするしでなんか大変なんだぞ？ んで、花瓶の水を変えるのも手間だし、植えようと思ったら日向の条件とか考えなきゃならんし、水を上げる感覚の調整とかだな」 「アルーグさん、ガーデニングとかしたら凝るタイプですね、絶対に」 （ぶつくさと文句を言う人間の男を半眼で見つめ、天魔は溜息と共に肩をすくめた） |