私は何をすべきなのか分からない。
だから、みんなを引き連れる彼がうらやましい。



俺は彼女に対して何をしてやれるのだろうか。
どこかへ行ってしまいそうな彼女をごまかしながら連れて帰るのも、もうそろそろ難しいのかもしれない。



(ああ、何を思っているのだろう、彼は)
(ああ、何を思っているのだろうか、彼女は)



『ねぇ』
『何だ』

雪が降るときというのは湿度が無く、非常に冷え込んでいるらしい。昔を雪国で生活していたので多少の寒さは平気らしいが、それでも雪そのものへの恐怖心は消えないらしい。今も掴んでいる腕が、寒さとは違う意味で、ほんの僅かに震えている。

『何でいる場所、いつも分かるの?』
『別に分かっているわけじゃない。ただ、お前がいそうな場所を手当たり次第探しているだけだ』

そういうと、彼女は普段から威嚇気味の金色の瞳を細めた。何かを思案しているのだろう、というのは、もう、長年傍に居続けたことによる経験じみたものである。
実際、彼女は不思議そうな声でたずねてきた。

『だから、その……私が居そうな場所、何で分かるのよ。確かに広くはない街だけど……』
『お前が一人になるときは、大体、人気のなさそうで静かな場所だからな。街中を把握してあれば予想はつく。特に、大型ポケモンが居座り続けれる場所なんて、限られるものさ』

他人のことには首を突っ込むのに、自分のこととなると何でも抱え込んでしまおうとするのは彼女の悪い癖だ。ただ、逆を言えば、自分は頼られるほどに彼女に信頼されていないのかもしれない。思わず苦笑すると、彼女がため息をついた。

『だから貴方って嫌い』

一瞬、その言葉にどきりとし、彼女の腕から手を緩めてしまう。すると、慌てたように彼女がこちらを見上げ、腕を引っ張ってくる。

『べ、別に嫌いって、好きとか愛してるとかそういう意味じゃなくて…………なんか、私のこと全部分かっちゃってるような感じで……信頼していないわけじゃないのに、信頼していないんじゃないかとか思ってそうじゃないの……だから、そういうところが嫌いってこと、よ』

つい、と合わせていたはずの視線を泳がせる。鋭い牙を覗かせる彼女の口が、への字を作る。
なんともまぁ、良いところを突いてくれる"相棒"だ。ほんの僅かに震えている腕をきちんと握りなおし、もう片方の大きな手で彼女の頭を軽く叩いた。

『俺のこと、信頼しているならいつでも頼れ。何でもかんでも抱えるな。迷惑だなんて思う方が、迷惑だ』

そういうと、大きな手の平に小さな振動を感じる。了解の意を示す軽い頭突きだと分かってから、彼はほんの僅かに意識を体外へ集中する。
瞬間、ぶわわっ、っと身の毛が逆立つ様な感覚と共に、周囲に見える雪が飛び退り、彼女を含んだ自らの周囲にだけ砂嵐が吹き荒れる。慣れ親しんだ砂嵐の感覚に思わずくすりと笑う彼女――ガブリアスを見下ろし、彼――バンギラスはため息をついた。

『キョウからお叱りを食らったら、お前も同罪だからな、ユリア』
『え、ちょっと、何でよ! ガイアが砂嵐起したんだから、私の所為じゃないわよ!』

灰色の空から降り注ぐ音を消すはずの白を彼らの砂色に染めて、二匹の足取りは平然と主人のもとへと向かう。





(「もうお前ら結婚してしまえちきしょー」
 ポケモンセンター前で傘をさして立っていた主人がそういうと、その隣に浮いていたゲンガーがくすくすと笑っていた。二匹の大型ポケモンは、その光景を前にして、不思議そうな顔で揃って首をかしげた。)

100211/ゲーム中では既に子供が数十匹いたりしますが何か。